※発生頻度は、調査によって結果が異なりますので、あくまで目安です。
※個人差が大きいので、まったく当てはまらない場合もあります。解釈は自分次第です。先入観に捉われず、自分の個性を伸ばしてください。
※気になることがある場合は、自己判断はせず、必ず専門医にご相談ください。
能力・気質・生活
【能力】
◆知能◆
デンマークでの報告によると、ターナー症候群の９４％は知能正常で、姉妹との知能の差がありません。
良い面は、言語能力に優れ、作文や本を読むことが得意な傾向があることです。一つひとつをきっちり仕上げることも得意な人が多いようです。
悪い面は、計算や図形問題などの空間認識や数学的な理解力に欠ける傾向があることです。一度に複数のことをこなしたり、複雑な過程を経て計画・実行し問題を解決すようなことも下手といわれています。また、注意力、集中力、短期記憶、非言語的記憶の低下もみられる場合もあります。多動や学習障害がある場合もあります。
言語性知能（ＶＩＱ）は正常ですが、行動性知能（ＰＩＱ）は多少劣る傾向にあるとされています。
母親由来のＸ染色体を持つ場合、
ＶＩＱ＝ ９６.２±１５.９
ＰＩＱ＝ ７９.５±１８.８
父親由来のＸ染色体を持つ場合、
ＶＩＱ＝１０６.４±１４.４
ＰＩＱ＝ ８２.１±１５.９
（知能指数は１００が中央値です。８５～１１５の間に約６８%の人が収まり、７０～１３０の間に約９５%の人が収まります。絶対的なものではなく、年齢によって指数が変化します。）
複雑な物事の運営、言語的・非言語的記憶力、注意力は、８～１２歳時に少量のエストロゲン投与を開始した例で明らかな改善が報告されています。
また、構造異常で環状Ｘ染色体の場合、知的障害を伴う場合があり、およそ１/３が特殊学級で学んでいます。父親由来か母親由来かによるＩＱの違いはありません。
ＶＩＱ＝ ８１
ＰＩＱ＝ ７２
※環状X染色体は歌舞伎（メーキャップ）症候群と似た特徴がありますが、歌舞伎症候群遺伝子が関与しているのか、単に特徴が似ているのかは不明です。
４７,XXYや４７,XXXの場合、ＶＩＱはやや低下傾向を示すものの、ＰＩＱは正常の範囲内です。
◆動作◆
ターナー症候群の児童は、動作がゆっくりで、体力がなくエネルギー不足、不器用なため、体育や図工が苦手といわれています。団体競技がより個人競技が得意の場合が多いようです。
筋肉の協調運動がうまくできない場合が多いです。手と手、目と手、足と手などの個別の動きを一緒に行う運動が著しく困難な障害です。キャッチボールが苦手であったり、消しゴムを使うと紙が破れてしまったりと、日常生活での運動に困難が現れます。
手先の器用さが求められる細かくて複雑な作業は困難かもしれません。
また、空間認知が弱いため、次のような傾向があります。
・字の綴り、文字、人の顔をなかなか覚えられない
・ぬり絵をするとき、枠からはみ出たり、すきまだらけになってしまう
・時間を理解すること、地図を読むこと、不慣れな土地で行きかたを見つけることが苦手
・靴紐を結ぶこと、おつりのやりとり、順序付け、視点を変えることが苦手
・探している本を本棚から見つけること、教科書の中から特定の単語を探し出すこと、写すことができない。
・ダンスを見て覚えたり、まねしたりすることが苦手
エストロゲン投与は、運動能力、状況把握、気分、社会性の改善に可能性があります。
（父の声：個人差が大きいのであくまで目安です。固定観念に縛られず、自分の能力を高めることを心がけましょう！）
【気質】
ターナー症候群の児童は、幼少期から心理的に「女性らしさ」の強い行動をとり、人形と遊ぶ（小児期）、赤ちゃんの世話に興味を持つ（成人）、怒りを表現しない、同姓の友達が多いといわれています。
規則正しいことが好きな反面、頑固で、説明もなしに変更があった場合や他の人の行動に対しては融通がきかないところがあります。
一方で、高圧的な態度や指導が苦手で、傷つきやすく、他人の非友好的な態度で弱気になり、他人からの評価をいとも簡単に受け入れる傾向にあります。
（母の声：自分がこういう傾向にあるということを知ることは大事なことです。その上で、直した方がよい部分はそうすればいいだけのことです。）
【生活】
◆学生期◆
ターナー症候群の児童は、相手の表情や、その場の空気、他の人が意図していること分かり難く、コミュニケーション下手なことが、学校での挫折感を助長する傾向にあります。
クラスメートと多く遊ばない傾向や種種の活動にあまり積極的に参加せず、自尊心や自意識の形成が遅れることから、思春期に親しい友人に恵まれないかもしれません。
同世代の女性に比べ関心を寄せる対象（ファッション、音楽、アイドル等の流行）が幼稚であることや、見た目が幼くみえることでいじめを経験することも少なくありません。
専門学校や大学に通う場合は、大きいキャンパスは少し威圧的に見えるので、小規模な方を選んだ方がよいかもしれません。
構造異常で環状Ｘ染色体の場合、精神発達遅滞がみられ、自己や他者に対して攻撃的であり、叫んだり、注意障害を示したり、強迫的であったり、自閉症と共通する特徴を有し、コミュニケーションがとれず、社会的困難を示す行動上の問題を呈する場合もあります。環状Ｘ染色体に母親由来の成分を有する場合は、この障害が軽度であるとの報告があります。
◆成人期◆
成人になった後のターナー症候群の女性は、一般社会人と何ら変わらない心理状態になるといわれています。精神的問題も高くありません。
就職時の不便さはなく、会社での人間関係も良好で、上司には適切に評価され、８３％が現在の仕事に価値があると考え、仕事に対する不満は少なく、仕事への価値観をもつ人が多いです。（身長の制約があるのでＣＡになるのは難しいかもしれません。）
仕事の計画を立てること、全体を見て整理すること、一度に多くの仕事を平行して行うこと、極めて巧緻性の要求される仕事や他人と共同で行う仕事を遂行することなど、スピードと時間制限が要求される仕事は苦手なようですが、個人差があります。
自動車の運転は空間認知と運動能力であるので、不得意である場合があります。
結婚率は高くはありませんが、良いパートナーに恵まれると普通の結婚生活を続ける例が多いです。
父親由来のＸ染色体を持つ場合、個人の認知・社交性に優れており、言語能力が高く、社会適応に関連する問題解決実行能力に問題が少ないといわれています。
（母の声：特に学生の頃は友人関係に悩むかもしれません。でもそれは誰にでもあることなので、あまり深刻に思いつめないようにしましょう。自分に合った職業、パートナーを見つけ、幸せな人生を歩むことを願っています。）