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※発生頻度は、調査によって結果が異なりますので、あくまで目安です。

※自己判断はせず、必ず専門医にご相談ください。

※生殖医療は日々進歩しています。時々最新情報を入手するように心がけてください。

※さらに詳しい内容はこちら(ブログ:ターナー症候群を知ったその日から

妊娠・出産②(取組)

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【国内外の取り組み・卵子編】

海外で卵子提供

国内で卵子提供を受けることは非常にハードルが高いため、海外に渡航する方が一般的です。2002年に国内の学会で初めてターナー症候群の女性の症例が発表されています。(それ以前も非公開ではあったようです。)

厚生労働省研究班によると、ターナー症候群に限らず高齢による卵子老化のため多くの不妊患者が渡航し、年間数百人が卵子提供で生まれていると考えられています。

渡航先にもよりますが、アメリカの場合は500万円以上、タイや台湾の場合は100万~300万円の費用が掛かるようです。また、海外渡航した場合でも日本人ドナーからの卵子提供というケースもあります。

ただ、流産や早産、大量出血の恐れがある癒着胎盤などのリスクや、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病が増える可能性もあるので、妊娠後も注意が必要です。

(父の声:現状では海外渡航による卵子提供が、最もターナー症候群の方が妊娠・出産しやすい方法となっています。しかし多額の費用やリスクが高いため、国内の卵子提供に関する法律の整備が求められています。)

実妹から卵子提供を受けた国内事例

海外に渡航し卵子提供を受ける例はいくつかありますが、国内で卵子提供を受けた例はこれまでほとんどありません。

数少ない報告として、2014年に熊本市在住のターナー症候群の方が、JISARTセントマザー施設内倫理委員会で慎重な審議を経たのち承認され、実妹から卵子提供を受けて無事出産した例が挙げられます。この方は合併症もなく、体格もよく、将来の卵子提供の可能性を踏まえホルモン療法を続けてきたので、子宮は正常な状態を維持できていたそうです。

医学的な理由による不妊症(ターナー症候群だけではありません)の方がJISART(日本生殖補助医療標準化機関)倫理委員会の承認を受け、卵子提供を受けるケースが年間数件あるようです。

(母の声:全てのターナー症候群の方ができるわけではありませんが、こうした事例は励みになります。)

国内の卵子提供支援

NPO法人OD-NET(卵子提供登録支援団体)が卵子を提供してくれる女性を募り、協力施設(不妊専門クリニック)で提供卵子による体外受精が実施できるように支援されています。

被提供者は、生まれつきの体質で卵巣機能が低下している女性(ターナー症候群など)、若くして卵巣機能が低下して月経が止まってしまう早発閉経の女性が対象となっています。

既にこの団体の制度を利用し出産された方もいらっしゃるようですが、2018年現在では新たな被提供者の受付が中止されています。今後の再開が期待されます。

(父の声:あくまでボランティアでの卵子提供となるのでマッチングが難しいかもしれませんが、これまで海外に渡航し高額の費用をかけなければならなかったことを考えると、ターナー症候群の女性にとっては大きな希望となることでしょう。理事長は、日本初のターナー症候群の会(ひまわりの会)を設立された方も非常にアグレッシブな方のようです。ターナー症候群の娘を持つ親として感謝です。)

娘の将来のために母親が自らの卵子を凍結保存した海外事例

2007年世界で初めて、カナダ在住の母親が娘のために卵子凍結保存を行いました。卵子を保存したのは当時36歳のターナー症候群の母です。当時7歳の娘は不妊になる可能性が高いことから自らの卵子保存に踏み切りました。

主治医は、「冷凍保存された卵子を使用するかどうかは、女児と将来のパートナーが決めることだ」として、必ずしも保存された卵子を使用しなければならない義務はないことを強調しています。また、「85%の卵子が凍結保存に耐え、出産に成功する可能性は40%あることが証明されている」とも語っています。

(父・母の声:国内でこうした取組みができる施設はほとんどありません。)

凍結卵子を用いて出産した海外事例

2021年世界で初めて、モザイク型ターナー女性(45X/46XX14/86)の凍結卵子を用いた出産例がベルギーで報告されました。卵子凍結年齢は25歳で、29個の卵子をガラス化凍結しました。AMH値は正常レベル(6.4μg/L)でした。5年後に挙児を希望しましたがAMH値がかなり低下しており、自然妊娠を諦め、凍結卵子を顕微授精(ICSI)しました。融解後に生存していた26個のうち13個の卵子が正常受精しました。胚盤胞に成長した3つの卵子を着床前診断(PGT-A)をし、正常な妊娠に至り出産しました。

(父の声:卵子凍結の技術が確立してずいぶん経ちますが、ようやくターナー女性の出産事例がでました。全てのターナー女性で可能なわけではありませんが、それでも大きな一歩です。)

【国内外の取り組み・卵巣編】

​◆卵巣組織凍結保存の海外・国内事例

2016年には、ターナー症候群ではありませんが、思春期前の9歳時に病気療養のため卵巣組織凍結保存をしていた24歳の女性が、卵巣を再移植後に妊娠出産したというイギリスの事例があります。

(父の声:デンマークでは卵巣凍結が無料で実施でき、ヨーロッパ全体では年間2500~6500件の卵巣凍結が行われているそうです。日本では経済的・心理的負担が大きいため、まだまだ一般的ではありませんが、ヨーロッパでは既に実験から実用の段階に入っています。)

新たな治療法「IVA(卵胞活性化療法)」

2013年に聖マリアンナ医科大学が、世界で初めてIVA(卵胞活性化療法)という新たな不妊治療により早発卵巣不全患者の妊娠・出産例を報告しました。

「IVA」とは、体外に取り出した卵巣組織にある操作を加え、卵巣内にある原始卵胞を体外で成長させ、細切した卵巣を自身の体内に戻す技術のことです。卵巣組織は凍結することで半永久的に保存が可能です。

前項の「卵巣組織凍結保存」と異なるのは、原始卵胞を成長させた状態にした上で卵巣を体内に戻すため、成熟卵子が得やすくなる点です。

早発卵巣不全患者37名に対しIVAを実施したところ、20名に残存原始卵胞が認められ、9名に卵胞発育が確認でき、7名から24個の成熟卵子が得られ、5名に胚移植を実施し、3名が妊娠し、2名が出産したという報告があります。

 

今のところ、原始卵胞が残存しているどうかは腹腔鏡手術で実際に卵巣摘出しないと判定できません。そのため有無の確認するだけでも100万円弱もの費用が必要なようです。

特に未婚ターナー症候群の場合、卵巣の保存期間が長く、卵巣・胚移植が一回だけとは限りません。そのため総治療(卵巣摘出→卵胞確認→卵巣凍結→薬剤刺激→卵巣移植→排卵誘発→体外受精→胚移植)費は、数百万円は想定されるようです。

国内で開発された技術なので実施可能な医療機関がいくつかあります。

この手法を用いてターナー症候群の方が妊娠・出産をしたことがあるかどうかは不明です。

(父の声:高額の費用をかけたとしても、出産にまで至らないことも当然ありえるし、そもそも原始卵胞が残っていないと実施できませんので、この手法を実施できるターナー症候群の方は限定的です。ただ、一部のターナー症候群も含む早発卵巣不全の患者さんにとっては画期的な技術です。生殖医療が確実に進歩していることを実感します。開発した関係者に感謝です。)

姉妹間で卵巣移植した海外事例

2011年ベルギーで、ターナー症候群の女性が世界で初めて、双子の姉妹間での卵巣移植を受けて妊娠出産しました。移植から数ヵ月後に生殖サイクルが定まり普通に妊娠できるようになったといいます。誕生児に染色体異常はなく、いたって健康だったようです。

(父の声:双子ではない姉妹でも同様の卵巣移植を行った例があるようです。)

⇒妊娠・出産③(研究)へ

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