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※生殖医療は日々進歩しています。時々最新情報を入手するように心がけてください。

※さらに詳しい内容はこちら(ブログ:ターナー症候群を知ったその日から

妊娠・出産③(研究)

【研究事例の紹介】

​◆多能性幹細胞(ES細胞、iPS細胞)から卵子を作製

「多能性幹細胞」とは、万能細胞とも呼ばれ、心臓や胃腸など、どんな器官にもなりうる細胞のことです。病気やケガによって失われた機能を回復させる再生医療、絶滅危惧種の人工的な繁殖などが期待されており、特に不妊治療の分野では人工的な卵子作製が切望されています。

「ES細胞」とは、受精卵(胚)の中にある細胞を培養して作られる多能性幹細胞のことです。本来は生命となるはずだった他者の受精卵(胚)を利用して作製するため、倫理的な問題を抱えています。

「iPS細胞」とは、自分の皮膚などの細胞を利用して作られる多能性幹細胞のことです。受精卵(胚)を利用しないため、倫理的な問題は少ないと言われています。ただし、遺伝子の導入の際にガン化の恐れがあります。

2012年に、京都大学の研究グループが、マウスの多能性幹細胞「ES細胞」と「iPS細胞」から卵子を作製し、それぞれの卵子から新たなマウスを生み出すことに成功しています。

2015年に、京都大学の研究グループが、人間のiPS細胞から、卵子や精子の基となる「始原生殖細胞(卵母細胞の前段階)」と思われる細胞を作る実験に成功しています。

2016年に、九州大学の研究グループが、マウスのiPS細胞から作製した始原生殖細胞を体内に戻すことなく、全て試験管での培養で大量の卵子を作製し、その卵子から新たなマウスを誕生させることに成功しています。

2017年に、京都大学の研究グループが、マウスのES細胞から、従来必要だった胎児マウスの卵巣細胞を使わずに、卵子の基となる「卵母細胞(原始卵胞の前段階)」の作ることに成功しています。

また、ターナー症候群ではありませんが、同じく染色体異常であるクラインフェルター症候群(47,XXY)やダウン症候群(21トリソミー)の方からiPS細胞を作製したところ、数%の割合で正常な型のiPS細胞ができたようです。

​​2018年に、京都大学の研究グループが、人間のiPS細胞から始原生殖細胞に似た細胞を作り、生殖細胞を取り除いた胎児マウスの卵巣の体細胞と混ぜて培養し、「卵原細胞」と思われる細胞の作製に成功しています。

2021年に、九州大学の研究グループが、実験容器内でES細胞からマウスの卵巣組織を再生することに成功しています。再生した卵巣組織で成熟した卵子を通常の精子と体外受精させ、メスのマウスに移植し、正常とみられる子が誕生しました。これまでは卵子を成熟させるためにマウスの通常の卵巣に移植するか、ヒトの胎児から採取した通常の卵巣と一緒に培養させる必要がありましたが、実験容器内でES細胞のみで卵子を作れるようになりました。iPS細胞からも卵巣組織の再生ができたようです。

2023年に、大阪大学の研究グループがオスのマウスのiPS細胞から卵子を作って別のオスのマウスの精子と受精させ、子どものマウスを誕生させることに成功しました。いずれも生殖能力があり、特に異常は認められなかったようです。

 

これまで人のiPS細胞を使った研究では、女性から卵子のもとになる細胞は作られていますが、卵子まで出来ていません。寿命がマウスよりはるかに長い人の卵子を作るには、長期間にわたって培養する必要があり、異常が発生しやすいと言われています。

現在の国の指針では、人間の多能性幹細胞を使って卵子まで作製する研究は認められています。ただし、倫理上の観点から受精卵を作製することは禁止されています。

(父の声:ここ数年の再生医療分野の研究発展は目覚しく、十数年後には人間の多能性幹細胞から人工的に卵子を生成できるようになると思います。技術的には、それを受精させて妊娠・出産というところまで到達することも可能となるでしょうが、倫理的な観点からそれが実施できるようになるまでは時間がかかるかもしれません。また、臨床で使用されるようになるためには、超高額な費用の問題を解決する必要があるようです。)

 

(母の声:研究の過程で早発卵巣機能不全の原因が分かれば、早期に対策することで妊孕性が保持できるようになるかもしれません。)

⇒妊娠・出産①(概要)へ

⇒妊娠・出産②(取組)へ

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