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アメリカの育児制度は充実していないが、それでも大丈夫な理由

  • 執筆者の写真: dad-k1
    dad-k1
  • 2017年5月30日
  • 読了時間: 3分

「アメリカでは出産してもすぐに復帰することが常識だ。だから出産後は早急に復帰するように。」

某外資系企業に勤める知人が実際に上司から言われたセリフだ。女性の社会進出が日本よりも進んでいる外資系企業にしては女性に配慮の無い、意外な印象を受ける。ただ単にいやな上司なのかというと、そういわけではないようだ。確かに米国では驚くほど育児制度が整っていないので、職場への復帰が早い。

フランス、スウェーデン、イギリスなどヨーロッパでは育児制度が充実している国が多いが、同じアングロサクソンが多い米国では育児休業の制度すら整備されていない。育児休業については各企業ごとに任されており、母親ですら取得率も低い。母親の育児休業取得率は

日本      約8割

スウェーデン 約9割

アメリカ    約3割

また取得日数も大きく異なり、日本では1年間取得する場合が多いが、米国の場合は1ヶ月程度が一般的となっている。

それだけではなく、保育制度も全く充実していない。日本の場合は認可保育園は園に対して国からの補助が出ていることもあり、私立であっても自治体ごとに保育料が決められている。認可外についても東京都の認証保育所のように自治体独自に経済的な負担を軽減するような施策を行っており、自己負担額が幾分かは抑えれている(それでも高額であるが)。

米国では基本的には保育園は私立しかなく、NYなど都市部の月あたりの負担額は20万円を超える。日本では10万を越えることはそれほど多くないので、2倍以上の支出である。

ただし、それは都市部に住むホワイトカラーの家庭での話だ。実は米国の出生率はフランスには及ばないもののスウェーデンと同程度の1.84と結構高い。なぜ育児制度が脆弱にもかかわらず出生率が高いのか。 

それは自由な労働環境のおかげと言われている。アメリカ人のいい意味でのルーズさが育児制度の脆弱性をカバーしている。就業時間なども緩いので、働きやすい時間帯を選べるし、サービス残業はない。また、日本の場合は、一度出産のために退職してしまうと、同程度のキャリアを再び得ることは難しいが、米国の労働市場は流動性が高いため、一時的に仕事を中断しやすい。そういった働きやすさもあって、高出生率が維持されている。

しかし、米国が育児制度に力を入れていない最大の理由は、伝統的に移民を受けれてきたからだ。トランプ政権は別として、米国は移民によって成り立ってきた国家であるし、今後も人口が増え続ける数少ない先進国だ。

つまり、人口減少社会の日本とは違い、移民の流入によりむしろ人口は増えているので、少子化が問題となっていない。だから育児制度も充実させる必要がないというスタンスなのだ。

サービス残業による長時間労働が常識的に行われ、労働市場の流動性も低く、移民を受け入れようとしない我が国において、米国女性と同じ常識を押し付ける冒頭の上司は、ミクロ的にしか物事を見れない視野の狭い人間なのだろう。

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