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草食系男子は、時代の申し子


【草食系】・・・心が優しく、男性らしさに縛られておらず、恋愛にガツガツせず、傷ついたり傷つけたりすることが苦手な男子のこと( 森岡正博氏による定義)

草食系と言われる男子が増えている。最近は話題にすらならないほど、草食系が増殖し、ある種の市民権を得ている。

マスコミは最近の男子は情けないと、バカにしたように草食系を取り上げるが、時代の栄枯盛衰を考えれば必然的に生まれたのが分かる。

日本経済が絶頂を極めた1990年頃までは、日本全体がイケイケだったので、自信に満ち溢れ、恋愛にも積極的な男子が多かったのは想像に難くない。いわゆる肉食系が多かった時代だ。

その後、バブル経済が弾けて、倒産が相次ぎ、1999年には有効求人倍率が0.5を切っている。職を求めても半分しか就職することができなくなった。その頃から、肉食系男子の勢いは失われ、草食系の原型が誕生したものと思われる。

1999年は、1976年生まれの大卒がちょうど就職する時期にあたる。ちょうどその2年前の1997年にアジア通貨危機が起こり、日本でも都市銀行や大手証券会社が倒産する事態に発展した。 

バブル経済崩壊の不良債権処理が先延ばしされ、そのツケがその頃に一気に吹き出た。その結果、有効求人倍率も最低で、就職難に喘ぐ若者が急速に増えた。そんな状況を学生時代に見せ付けられれば、リスク回避嗜好になるのも無理はない。

また、1976年生まれは、団塊ジュニア(1970年~1974年)以降に生まれており、出生率も2を切り始めたときだ。徐々に若者が少なくなり、高齢化も相まって上の世代の厚みが増していった。そして就職難により採用者数も少なかったので、職場でも上の世代が多く、身動きが取りづらかったと想像される。

その後、2005年頃からに一時的な景気の回復もあり、有効求人倍率は回復したが、2008年のリーマンショックにより、再び下がってしまった。最近ではまた人手不足により求人が上昇しているが、肉食系男子が増えたという話は聞かない。

おそらく、若者も、一時的に景気がよくなっても、そのツケは将来的に払わされると考えているのだろう。その結果、貯蓄嗜好、嫌消費、そして恋愛しないという草食系が増え続けている。

少子高齢化はまだまだ進行しており、留まることはない。今後も、経済学でいう人口オーナスの状況が続くので、一時的なものは別として、基本的には経済が縮小していく。また、若者は益々マイノリティとなるので、大きな勢いを示すことは難しいだろう。最近は昔ほど目立った流行がなくなったが、それは若者が減少したことも大きく影響している。

いつしか、草食系男子がスタンダードとなり、恋愛することが珍しい状況になるかもしれない。そうなると、少子化対策は無力だ。今なら、経済的理由で子どもを控えている人も多いので支援することはできるが、恋愛に関心すら示さない場合はもう支援すらできない状況になってしまう。そうなるとますます少子化が進むという負のスパイラルに陥っていくのではないかと危惧してしまう。

そうなる前に、できるだけの支援を早急に実施しなければ、この国に未来はない。

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