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なぜか低いドイツの出生率


第二次世界大戦の敗戦国で、徹底的に社会資本が破壊され、ゼロからスタートした工業国、日本とドイツ。

まじめな国民性、自動車産業、科学技術など、位置は違えど似ている点は多い。さらに少子化問題に直面し、なかなか改善しない点も非常によく似ている。

他の欧州諸国と同様、ドイツもまた手厚く少子化対策を実施している。例えば、産休中の所得保障は100%(日本は67%)、児童手当が最長25歳まで約2万円(日本は3才未満が1.5万円、3才~中学生1万円)、育児休業が3年間(日本では1年間)と、日本よりかなり手厚い。

しかし出生率を比較すると

日本   1.44(2016年)

ドイツ   1.50(2015年)

フランス 1.92(2015年)

であり、ドイツ同じ欧州のフランスよりも日本の方が近い。フランスと比べても子育て支援の手厚さは遜色ないにもかかわらずだ。これは単純に手当てを増やすだけでは少子化が改善されないことを意味している。

なぜ手厚い手当てがあるにもかかわらず、出生率が改善しないのか。それは日本と同様で待機児童が多いことだと言われている。ドイツでは保育園は働いていなくても、入園を希望すれば、自治体に待機児童を無くす義務が生じる。それならば待機児童問題は無くなるはずだが、実際は希望する園にはなかなか入れないようだ。

日本でも、ドイツでも、経済的な負担軽減のみでは少子化は改善されない。子育てには相当な費用を要するから、経済的負担軽減はもちろん必要なことである。しかし保育園という預け先が見つからず、やっと見つかっても自宅と職場から遠かったり、費用が高かったりすると、子育てに対するモチベーションのみならず、労働意欲も低下する。

ただし、日本とドイツは同じくらいの出生率であり、少子化が問題となっているが、決定的に違う点がある。それは移民政策だ。日本では移民はほとんど受け入れてこなかったが、ドイツは人口減少問題を深刻に考えており、シリア難民が問題視された時期もかなりの難民を受け入れた。それは人道支援ということもあるだろうが、人口減少問題を解決するという裏の目的もあったはずだ。

2015年の大晦日にケルンで起きた集団性的暴行事件が発生したので、移民政策の陰の部分がクローズアップされ、世論は政策の誤りだとする方向に傾いているが、依然としてドイツ政府から移民体制を大転換するような発表はない。治安の悪化、価値観や文化の衝突などあるが、本音では移民を受け入れなければ、経済や社会が成り立たないと思っているだろう。

日本では国民のメンタリティからしても移民を大量に受け入れることはほぼ不可能に近いが、少子化対策ならばできるはずだ。保育園が近所に建設予定だとしても、反対運動など起こさずに次世代の育成を温かく見守ってほしい。

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