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「子育て」 と 「幸福」 の関係性


金融資産(不動産、株式、債権などから得られる経済的自由)

人的資本(労働力から得られる賃金や自己実現)

社会資本(家族、友人、恋人との絆)

"幸福の「資本論」"で、作家の橘玲氏は、幸福になるために必要な3つの基盤を示している。それら3つの基盤がしっかりしているほど、幸福が得られやすいということになる。

お金だけあっても、仕事だけ充実していても、家族・友人・恋人との関係がうまくいくだけでも、幸福にはなれない。それぞれが充実して初めて幸福の基盤が整う。幸福は人それぞれだけど、人の感覚はそう変わりない。お金がなくて、仕事がなくて、社会から孤立した生活を送って、幸せだという人はほとんどいないだろう。

もし、幸福になるための基盤が、橘氏のいうとおりだとすると、子育てをするというのは幸福につながるのだろうか。

まず、子どもを育てるというのは、金融資産は減少する。なぜなら、子育て費用は一人育てるにも約5000万円(東京の場合)掛かり、金融資産の額を大きく左右する金額だ。また、子どもは一家の金融資産を増やす存在ではない(昔は畑仕事などの労働力としての価値があったが、今はない)。老後、子どもの仕送りで暮らせる人はかなり稀なので、将来的にも金融資産の寄与には貢献しない。

人的資本もまた減少する。なぜなら、子育ては手間をとられる以上、人的資本の機会損失につながるからだ。仕事を辞めた場合や育児休業中は、給料がなくなるし、仕事から得られる充実感はなくなる。再び働き始めた場合も労働時間が制限されてしまう(長時間残業がやっと社会問題化しているが、残業代が全くなくなると、家計が厳しい家庭も多い)。

最後の砦は、社会資本だが、これは確実に増加する。子どもとの絆は何ものにも変えられない。いくら仲のよい親友や恋人でも大ケンカすればあっけなく会わなくなるが、子どもとはそれはほとんどない。また、子どもを通してできる友人ができることもある。

現代社会における子育てとは、金融資産と人的資本を犠牲にして、この社会資本を得ているといっても過言ではない。そして少子化が進む原因は、この幸福の資本論で考えると、すごくシンプルで、

社会資本の増加 < 金融資産、人的資本の減少

が不等号の向きが上式のようになっているからだ。もし、社会資本の増加の方が大きければ、二人目の壁など存在しない。そうなれば、可能な少子化対策は、金融資産や人的資本の減少を少なくし、社会資本をより増加させることだ。

具体的には、金融資産は、児童手当の拡充や子育て家族だけの特別金利、美術館の無償化など、子育てによる金融資産へのダメージを極力軽減することだ。また、人的資本においては、子育てしながら働き続けることができるようにすることや、子育てに対して後ろめたさを感じさせないような社会常識が必要となる。社会資本の増加は、できるだけ家族との時間を持てるような職場の配慮などが考えられる。

現代社会の構造では、子育ては自己責任と言われ、幸福度が下がる仕組むになっている。その社会構造を変化させない限りは、少子化による人口減少問題は解決などするはずがない。

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