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夕張市から見える人口減少の行く末


2007年、ブランドメロンで知られる夕張市が事実上の財政破綻を起こした。

夕張市は最盛期にはおよそ12万人も住む炭鉱の町だったが、石炭から石油へとエネルギー革命が行われたことにより、急速に人口が減少した。現在は1万人を切り、最盛期に比べて10分の1以下の人口となっている。

元都庁職員の若い市長が奮闘し、着実に負債を減らしているが、同時に行政サービスも削られる。その結果、若い人を中心に周辺に転居してしまい、人口減少の流れは留まる気配がない。65歳以上の高齢者比率はなんと50%を超えている(全国の市で最高)。

夕張市の財政破綻の原因は、産業の転換にうまく対応できなかったことが挙げられている。「炭鉱から観光に」をスローガンに転換を図ったが、結果が揮わずに、観光施設は市の財政の重石となっている。一方で人口減少は続いていたので、市の財政も減少し、ついに財政再建団体になってしまった。

そして夕張市の住民は、高負担を強いられているにも関わらず、サービスは最低という状況下で暮らしている。例えば、水道料金は1.7倍に増加したが、9校あった小中学校は1校にまで統廃合されている。また、行政運営のノウハウを持ったベテラン市職員も相次いで辞職し、夕張市を復活させたいと大きな志を持って入った新規職員もまた、現場の状況に耐え切れず長くは続かない者もいる。

人口が減少するからといって、行政サービスがそれと同じペースで縮小していくわけではない。人口が10分の1になったからといって、水道網が10分の1にはならない。一度拡張した居住区域の縮小は困難だからだ。結果として、職員数が半減する中、業務量は変わらずに、職員一人当たりの業務量は大幅に増えた。しかも財政再建下なので、人件費はかなり抑えられている。あまりの状況に、市民から職員の給料を上げてくれという声が上がるくらいだ。

夕張市は人口減少社会の先頭を走っている。人口減少に対して楽観的な見方もあるが、夕張市民の状況を考えると、楽観視など決してできない。日本全体でみると夕張市ほどの人口減少は予想されていないが、人口減少がある一定程度になると、中核市に人口が集中し始める。そうなると、全国各地に夕張市のように財政が立ち行かなくない自治体が続出するだろう。

夕張市のように、住んでいる自治体の財政が破綻した場合、身動きが取れる若い世代であれば周辺へ転居できるが、高齢者はそうもいかない。そうなると働いていない高齢者ばかりが残り、税収も限られることから、相当なサービスをカットせざるを得なくなる。

人口減少はまだ始まったばかりで、これからが本格化する。その影響をできるだけ緩和できるようにするために、社会は意識を変えなければならない。

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