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人口減少社会でも、住宅が増え続ける理由


住宅が増え続けている。

この国は既に人口が減少し始めたにもかかわらず、住宅が増加し続けている。建設業者の話によると、人口は減り始めているが、世帯数はまだ増えているので、ニーズがあるのだという。だが、その一方で空き家も同時に増え続けている。

結婚して、実家を出る若いカップルが、古い木造の空き家に住むというのは一般的ではない。華やかな生活に憧れてより新築に近い物件を求めるだろう。そのために空き家は減らずに、新築物件は増え続けている。

それならば古い空き家を取り壊し、その場所に新築を建てればよいのだろうが、そうは簡単にいかない。税金上の問題や、所有者の意思の問題が大きく、土地の転用がなかなか進まないのが現状だ。

空き家は防犯上、防災上、景観上、様々な危険性を生み出すので、放置できないのだが、新しく増える住宅もまた問題を生み出す。

人口減少社会に対応するためには、街をコンパクトにまとめなければならないのだが、それとは逆に、これまで住宅地ではない郊外を新たに開発し続けている。そうすると、既成市街地は空き家問題が噴出する一方で、市街地は拡張していくことになり、地域社会の運営が非常に困難になる。

新たな市街地の拡張はインフラも整備しなくてはならずに、市の財政を圧迫することにもなる。一度作ったインフラは長期間維持しなくてはならないので、維持費もかかり続ける。

空き家問題、インフラ費用負担、広がりすぎて行き届かない行政サービスなど、新たな問題が出てくるにもかかわらず、なぜ止められないのだろうか。それは購入者と地権者と建設業界のそれぞれの思惑が一致するからだ。

購入者はできるだけ安い方がよい。しかも規制市街地は道路も狭く、車が使いにくいので、郊外に新たにできる住宅街の方が使い勝手がよい。地権者は、農地として使っていたものを住宅に転用した方が利益がでるのでできればそうしたい。建設業者は規制市街地の複雑な権利関係を整理して1棟だけ建てるよりも、権利関係もわかりやすい広い土地に数棟まとめて建てる方が効率が良い。

そうして、3者の思惑が一致することで、人口減少にもかかわらず、住宅が増え続けている。おそらく世帯数が減少に転じたとしても、この流れはしばらく変わらないだろう。市街地が止めれ処なく拡張し、人口減少に耐え切れず、生活が脅かされるくらいに不便な地域が続出してやっと拡張が止まるかもしれない。

人口減少は始まったばかりでこれからの問題なので、問題が顕在化する前に対策を講じる必要がある。だが、住宅を例にとっても、問題が大きくなってからでないと、社会の意識は向かないし、対応策へのコンセンサスも得られない。なぜなら、社会には粘性があり、急激には変化しないからだ。ましては慢性的な人口減少社会に突入したことはないのだから、社会は将来的な問題よりも目先の利益を優先させる。

人口減少社会に起こる問題は、住宅だけではなく、介護、業務、世界のパワーバランスなど様々なことに変化を及ぼすため、致命的な事態になる前に、社会が迅速に動かなければならない。

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