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共働きしやすい環境が、出生率を向上させる


少子化対策は、大きく分けて2種類がある。

一つは児童手当などの「経済的支援」、もう一つは保育園・学童保育の整備などの「両立支援」がある。どちらも子育て世帯には必要な措置だが、少子化に悩む国に注目されているのが「両立支援」だ。

高出生率先進国のフランスも、かつては経済的支援中心だったが、「両立支援」にも力を入れたところ、出生率が段階的に改善したと言われている。ドイツも手厚い「経済的支援」を行ってきたが、出生率の改善が見られなかったため、「両立支援」にも取り組み始めた。

子育てには多額の費用が掛かる(東京の場合、1人あたり5000万円くらい掛かる)。そのために「経済的支援」が必要なのだが、それだけでは支援には限界がある。出産祝い金で数千万が支給されれば子育て費用はほぼ賄えるが、さすがに財源の問題に直面するだろうし、社会のコンセンサスが得られない。

会社員の平均年収はここ20年くらいはほぼ横ばいとなっているが、一方で、大学進学率と学費が上昇しており、家計を圧迫している。それでも、多額の子育て費用を用意しなければならない。また、年金受給額の見通しがつかないなか、老後費用の蓄えも必要だ。

その問題を解決するために、これまで専業主婦世帯が主流だったのが、妻も就労する共働き世帯にシフトする家庭が増えている。夫の収入が増えないのならば、妻も働きに出るというのは自然の成り行きだ。

妻が就労することで家計は劇的に改善する。これまでは、結婚と同時か、第1子出産のタイミングで寿退社し、その後、子育てが落ち着いてきたら、また働きにでるというのが一般的だった。しかし、日本社会は一度会社を辞めブランクが開くと、再び正社員として働ける可能性は低い。そのため、パートや派遣社員として働くことが一般的だ。

正社員とパートでは生涯所得が1億円くらい差が出る。子育て費用と老後資金を考えれば、出産後も会社を辞めずに正社員でいることが経済的に考えると重要だ。もちろん、子どもと過ごせる時間はパートの方が多いので、一概にどっちがよいかの判断は難しいが、それは自由意志による選択となる。

しかし、現状は共働きを選択したくてもできないという問題がある。今は、育児休業からの復帰のための保育園入園の待機児童が社会問題になっているが、保育園に入れられるなら働きに出たいと思う母親も多く、潜在的な待機児童も実は多い。そのニーズに対して(場所、料金、環境面で)利用しやすい保育園が圧倒的に足りていない。

また、共働きできない理由は保育園の不足だけではなく、そもそも育児休業がとれない、父親が育児参画できる状況ではないといった理由もある。男は長時間労働で、女は子育て、という社会常識がなかなか抜けきれていないことが原因だ。

経済支援にしろ、両立支援にしろ、まだまだ他の先進国に比べて支援が足りないのは明白なので、まだ改善の余地はある。それが、少子化問題解決の唯一の希望だ。

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