top of page

出生率よりも出生数


人口を維持するために必要な出生率は、2.07

新聞記事にはそのように書かれているが、現状よりもはるかに高いその出生率を達成したとしても、かなり長期間(100年以上)人口は減り続ける。なぜなら、妊娠適齢期の女性が既に減っているので、そもそも母集団が少ないためである。

この国で出生率が2.07以上あったのは、なんと1973年まで遡らないといけない。44年も前の話で、当時30歳だったお母さんが、今は74歳のおばあさんになっているほど昔だ。当時30歳の女性で大卒・短大卒は5%くらいで、現在は55%を越えている。また初婚年齢も25歳くらいだったのが、現在では30歳くらいになっている。44年の間に時代は大きく変わった。

要するに、女性は早く結婚して、家に入り、子育てを行うという、現在と全く異なる社会常識の中でやっと達成できていたのが2.07という数字だ。現在は半数以上が大学・短大に進学し、それから就職して仕事を覚えていたのでは、とても25歳に結婚できそうにない。そして25歳に結婚を催促される世の中は誰も望んでいない。

もし、その難関な25歳に結婚するというハードルをクリアーし、出生率が2.07になったとしても、人口は減少し続けるのだ。いかに人口維持が困難なことかわかるだろうか。

仮に、現状の1億2千万の人口維持を長期目標とすると、向こう100年間は、出生率2.2まで回復させなければならない。そうすれは、約50年後の2065年は1億1千万人まで減少するが、約100年後の2115年には1億2千万人に増加する。

その後、2.07に低下しても人口は1億2千万は維持できる。しかし、出生率2.2というのは、今よりも1人多く子どもを産まなければ達成できない。

現在の出生率は2.07を大きく下回った1.44であるし、出生数は1973年に200万人を上回っていたのが、2016年には100万人の大台を下回って、さらに2060年には50万人を下回る予想になっている。2005年に出生率1.26の最低記録から若干持ち直して1.44となってはいるが、出生数は2005年当時よりも減少している。

出生率が多少上昇したといって喜んでいる場合ではない。出生率が多少改善しても、出生数は減少し続けている。その率と数の関係を、社会はどれほど理解しているのだろうか。そして、かなり長期間人口が減り続ける出生率2.07にすらはるか及ばない現状に、どれだけ危機感を持っているか。

人口減少は大した問題ではないと高をくくって少子化対策を怠り、出生率が1.00まで低下した場合は、100年後のこの国の人口は2600万人まで減少し、65歳以上の高齢者割合は、50%を越える(現在は夕張市が既にそうなっている)。

そんな未来は本当に問題ないのだろうか。

#出生率 #出生数 #2060年 #2115年

RECENT POST
bottom of page