人口減少社会の利点を考える
- dad-k1
- 2017年5月14日
- 読了時間: 3分

「光と影」
物事には必ずと言っていいほど2面性がある。
例えば宝くじが当たったとしたらどうだろうか。よいことばかりに思えるが果たしてそうなのだろうか。実は高額当選した場合、主催者側から注意喚起を目的とした冊子が手渡される。瞬時にして大金を手にした者は、その負の力(窃盗被害、妬み、知り合いからの過度の要求など)を強く意識しないと破滅する場合もあるからだ。
人口減少についても光と影が混在している。
影の部分は、経済活動やイノベーションの停滞、この国のプレゼンスの低下、年金負担の増大、世代間格差など様々な問題を生み出す。
一方で、光の部分もある。
その光を正確に捉えたうえで、社会にとって何が有益なのか熟慮し、人口減少社会を受け入れるか、対策を講じるのかを選択することが重要だ。
実際にどのような正の作用があるか考えてみたい。
1.過密解消
そもそも江戸時代の日本の人口は3000万人くらいだったのだから、人口が今後50年間で3割減少しようが問題なくやっていけるんではないかという仮説。適正な人口がどれくらいかは様々な意見があるだろうが、確かに東京圏のような過密地区では慢性的な満員電車や交通渋滞の問題を抱えておりその解消を望む声も多い。
2.資源枯渇
世界では人口爆発が続いているので、これ以上人口を増やすことこそナンセンス。食料や石油など資源が不足するのなら人口減少のほうが望ましいという仮説。地球の生態系を考えると、これまでは増えすぎた人口をあえて減らすかの様に戦争や疫病の流行が起こってきた。それに比べれば、少子化は生ける者の死に直面するわけではないので、幸福な自然作用とも言える。
3.失業率の低下
少子化は人手不足を招き、それによって失業率が低下し、また賃金上昇を促すという仮説。人手がだぶついた状態では、企業は雇用を抑えようとして特に新規の採用を見送る。そうすると特に若年層の失業率が上がる。バブル崩壊後のロスジェネ(失われた世代)が正規社員になれずに日雇い労働やアルバイトで生活をつないでいるうちに年を取っている状況をみると、若年層の雇用の安定や賃金上昇が社会に明るい兆しを与えることは間違いない。
これらの仮説は、そのとおりだ。正しいこと言っており、反論の余地はほとんどない。だが、これら人口減少の光の部分が際立つのは、限定的な条件化においてのみである。限定的な条件とは、高齢化を伴わない緩やかな人口減少であることだ。
なぜなら人口構成が今のままで、複数の生産年齢の人たちが一人の高齢者を支え、なおかつ人口減少率も急激ではなく緩やかであれば少しずつ社会を変えていけるからだ。そのような状況であれば人口減少は社会にとってむしろ望ましい。
だが、現在この国における少子化による人口減少は、急激かつ高齢化を伴っている。限定的な条件を満たしていない。
急激な人口減少は社会を支える担い手不足の深刻化を招き、高齢化比率の向上はイノベーションを停滞させ、世代間格差を生み出す。それはやがて持続的な社会運営を困難にする。つまり人口減少のメリットとでディメリットを比較した場合、はるかにメリットが勝ってしまう。
人口減少社会を受け入れるか、対策を講じるか。どちらの選択が正しいか。
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