祖父と孫の世代間格差
- dad-k1
- 2017年4月16日
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フランスの経済学者トマ・ピケティが示した単純な数式は、瞬く間に世界中で取り上げられて話題になった。この数式の意味を簡単にいうと、不動産や株式から得られた収益は、経済成長から得られる賃金の伸びを上回るということだ。さらに平たくいうと、貧富の差は拡大し続けるという事実を、過去200年ほどの各国のデータを集めて突き詰めた。つまり資本家と労働者の格差は開き続ける。
確かにアメリカ社会ではグローバル企業の経営者が毎年十億単位の報酬を得ているし、株価や地価も上がり続けている。ヨーロッパでもアメリカほどではないが同様の傾向があるようだ。
では日本はどうか。日本はバブル期をピークに株価、地価ともに高値を更新してはいない。むしろ低迷している。そう、格差社会といわれて久しい日本は、実はアメリカほどの格差は存在せずに比較的平等な状態が保たれている。
というわけで、めでたしめでたし、とはならない。
日本の格差の本質は、「資本家VS労働者」ではなく、「じいじVS孫」である。つまり世代間格差がとてつもなく大きい社会となっている。極端な言い方をすると、高齢世代が若者世代やまだ生まれてもいない将来世代から搾取する構造になっている。高齢者は自分たちの生活だって豊かではない、搾取なんて言いがかりだと思われるだろうが、現在の日本の社会保障制度はそのような仕組みになっている。
社会は支えあいの上で成り立っている。年金、医療、介護など自分が社会的弱者になったときに頼れる制度が社会保障だ。その恩恵を受けるためには当然負担も伴う。打ち出の小槌などこの世には存在しない。その受益(恩恵)と負担のバランスが取れていればよいのだが、世代間に大きな格差がある。それは、r>gと同様に単純な数式で表現できる。
高齢世代: 受益 > 負担
将来世代: 負担 > 受益
そして高齢世代と将来世代の差がどれくらいあるかいうと、法政大学の小黒教授の試算によると高齢世代と将来世代の差はなんと1億円以上にも及ぶそうだ。数式で表すと
高齢世代: 受益 - 負担 = 4000万円
将来世代: 受益 - 負担 = -8000万円
⇒ 高齢世代 - 将来世代 = 1億2000万円
となる。高齢世代は生涯を通して、自ら負担した額よりも社会保障制度から受ける受益の方が4000万円も多く、将来世代は逆に8000万も少ない。サラリーマンの生涯賃金は約2億円といわれているので1億2000万という差がいかに大きく金額かが分かる。
若者の車離れや海外旅行離れなど消費行動の変化が取り上げられることがあるが、若者はこの予測される将来負担の大きさのせいで、せっせと貯蓄に励まなければならずに、結果として嗜好品に手が届かないだけだ。具体的な数字は知らなくても若者は自分たちの未来が必ずしも輝かしいわけではないことに気がついている。そして彼らは自分の生活を守るために、コストのかかる子どもを育てようとはなかなかならずに、さらに将来世代の負担が増えていく。
ただ、少子化のせいで最終的に孫がたくさんの相続を受けるのだから、結局は世代間格差はないという主張もある。その一面も確かにあるが、相続を全く受けられない者はどうなるのだろうか。当たり前の話だが、皆が平等な金額を相続できるわけではいない。例えば児童擁護施設で育った将来世代はどうなるのか。負担ばかり強いられて、生まれた時から高確率で貧困化することが確定してしまうのではないか。つまり、これからの日本の格差は
高齢世代、相続を受ける将来世代 >> 相続を受けない将来世代
という。世代間格差のみならず、世代内格差も生む。しかもそれは平等な競争の結果としての格差ではなく、生まれながらにしての格差となる。
若者たちはその事実をしっかり認識する必要がある。
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