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経営の神様が創った「終身雇用」の副作用

  • 執筆者の写真: dad-k1
    dad-k1
  • 2017年5月11日
  • 読了時間: 3分

実力社会、競争社会、格差社会。

グローバル化によって、経営の神様「松下幸之助」が創造した日本式経営が揺らいでいる。終身雇用についても同様だ。

終身雇用や年功序列は古くから日本の伝統と思われがちだが、実は高度成長期に松下幸之助がつくった歴史上比較的新しい制度である。不況期においても雇用を確保することで、社員たちに安心感とモチベーションの向上をもたらしたと言われている。経営の神様が創造したそのスタイルを他の大手企業が追随し、日本式経営を象徴するものとなった。

一方で、社員は家族同然なんだから解雇しない代わりに長時間労働もいとわずにやってくれという暗黙のルールも付随し、サービス残業を前提とする経営を可能とした。

そうして社会全体にサービス残業による長時間労働が慣行化した。それが高度経済成長の原動力となった面は確かにあるのだが、その副作用としてワンオペ育児を当たり前のものにし、次子を設けるモチベーションを下げ、少子化へとつながってしまった。

また、終身雇用は一見すると社員に雇用を約束させることで幸福を与える制度であるが、一方では人材の流動性が極端に悪くなる。どの会社も終身雇用制度を採用した結果、転職しようにも転職先が見つからない。もちろん今では少しずつ変わりつつあるが、それで35歳以上の転職はまだまだ一般的ではない。

流動性が乏しい労働市場であれば、その組織に馴染めなかったり、新たな業種に挑戦したくても諦めるしかない。幸福につながると思われ制度が逆に人生を硬直化させ、可能性をもぎ取っているとも言える。

しかし不思議なことに、最近の新入社員はグローバル化とは逆を行くように終身雇用を望んでいる。ただ、終身雇用は表向きは安定をもたらすが(それは会社が傾かないという条件付の安定)、その分それを逆手にとられて、労働力の搾取につながりやすいことを考える必要がある。

ほとんどの人は終身雇用で安定を確保しながら、転職がしやすい都合のよい社会を望んでいる。だが、ひとつの労働市場ではそれは両立ができないトレードオフの関係だ。

ならば、若い人ほどその後の可能性をもぎ取り、長時間サービス残業をもたらす終身雇用を支持すべきではないのだが、現状においては一旦解雇されればなかなか這い上がれない大人たちの姿をみていれば、表向きの安定を求めることは自然な流れだ。

もし社会全体で、日本式経営からグローバル式経営に変革されたら、終身雇用はなくなるかも知れないが、その代わりに転職市場は活性化し、長時間サービス残業を美徳とする悪しき慣行は是正される。

それが父親の育児参加を促し、次子を設けることへのモチベーションにつながる。もちろん、マイナス作用もあり、解雇されやすくなるだろうから、失業期間のセーフティネットはもっと充実させなければならない。

粘性のある日本社会は、日本式経営とグローバル式経営の狭間にある中途半端な状況だ。終身雇用が確保されない不安がある状態で、転職市場の流動性も限定的という悪いとこ取りの状態に陥っている。

その状態が長く続けば、ワンオペ育児が解消されずに、少子化が進み、移民を受け入れようともしないこの国の国力は少しずつ、確実に衰退していくことになる。

どちらの社会がよいか、考えなければならない。

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