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人口減少社会の実害が出始めている


2015年度の国勢調査の結果で、1920年の調査開始以来初めて人口減少が観測された。

この国の人口は確実に減り始めている。ただ、今はまだ人口のピークに近いところにいるのでそれほど実感が沸かないかも知れない。人口減少という名のジェットコースターが勢いを増して下り始めるのはもう少し先になってからだ。

まだまだそのような状況であるが、少子高齢化に伴う人口減少の実害は少しずつ出始めている。分かりやすいのが介護業界をはじめとする労働力不足だ。人口減少が始まるより前に生産年齢人口(15-64歳)が先に減少してきたが、定年の延長や女性の社会進出支援などでを進めた結果、これまではさほど問題なくやってこれた。だが、少しずつ労働力不足が観測されだした。

介護業界は労働環境の悪さが原因となって離職率が高くなっていることもあるが、宅配業者の配達時間の見直し、24時間営業店舗の営業時間の見直し、人手不足による業務停止など、実は身近に人口減少の実害が出始めている。

バブル期を上回った新卒者内定率も、景気によるものではなく、これまで採用を減らしてきて限界を迎えている組織をなんとか保たせるためだ。このままだと、介護や宅配など地域を支えるための業種もさることながら、ITや製造業などグローバル企業と戦わなければならない業種も人手不足に見舞われ、国際競争に敗北することになる。

AIが発達して、安価なアンドロイド(OSではなく、人型ロボット)が普及すれば人材不足問題は解決するのかもしれないが、いくら進歩が早いとはいえ相当な時間を要する。

人口減少の実害はこれから益々加速していくだろうから、アンドロイドの完成を待ってはいられない。そして人間以上の能力をもったアンドロイドがいつか完成したときは、今度は人間の失業率が極端に上がっているかもしれない。たださすがにそれは近い将来とは思えないので、喫緊の課題とまでは言えない。

とにかく、アンドロイドの完成速度と、この国の人口減少速度が合致していないので今後数十年は常に労働力不足問題が付きまとうだろう。

例えば今から、出生率を大幅に上げるような大胆な政策を実行したとしても、労働力不足を補うためには最低でも20年はかかる。移民を受け入れるにしても、ドイツ・ケルンで起きた移民による集団暴行(強姦)事件などを考えると、すぐに実行できるわけがない。ほとんど議論されていないし、世界的にみても移民を受け入れはトレンドではない。

残念なことではあるが、急激なダウンサイジング社会になることは確定しているので、その間はできるだけ実害を少なくする方法を考えて、なんとか社会を持たせる努力をする他無い。しかし今すぐにでも大胆な少子化対策を実行し、少しでも実害が多い期間を短縮することも必須となっている。

人口減少社会の弊害が出てくるのは、これからなのだから。

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