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来なかった第3次ベビーブーム

  • 執筆者の写真: dad-k1
    dad-k1
  • 2017年4月28日
  • 読了時間: 3分

2016年、推計出生率は100万人の大台を切った。少子化が進んでいる。が、これまで一貫して少子化だったわけではない。かつてこの国には2度のベビーブームがあった。

1回目は1947年~1949年頃。その頃は戦争の影響が色濃く残る、産めや増やせやの時代。その3年間はなんと年間270万人もの新しい命が誕生している。この第1次ベビーブームがやがて団塊の世代と言われるようになり、数の力で日本社会に大きな影響を持つようになる。

2回目は1971年~1974年の間に起きた。団塊の世代が概ね同時期に結婚し、子どもを授かり、いわゆる団塊Jr.が多く生まれた。第1次ベビーブームほどではないが、年間200万は超え、出生率も2を維持していた。

そして3回目。団塊Jr.達が結婚・出産を迎えるピークであるはずだった1998年~2006年頃の出生数はその前後の時期とさほど変わりない。つまり第3次ベビーブームは起きなかった。出生数は100万の大台はまだ維持しているものの、120万~130万の間に収まっている。団塊Jr.Jr.と呼べるほどの数はいない。

なぜ、第3次ベビーブームが起きなかったのか。

それは不運にもアジアで起こった経済危機に巻き込まれたことが理由のひとつだった。1997年にタイを震源とするアジア通貨危機が起こった。経済は混乱し、隣の韓国ではIMF(国際通貨基金)の管理体制に置かれる事態にまでなった。他のアジア諸国ほどではないが、その余波が日本にも及んで都市銀行や大手証券会社が倒産した。

またその時期に消費税も増税したため、バブル崩壊から少しずつ立ち直りつつあった日本経済は立ち直るきっかけを失った。消費税自体はこれからの世代のために必要な措置であるので着実に行うべきだが、その時期が悪すぎた。

結婚・出産適齢期に差し掛かった時期に起きた不況の波。社会全体に言い知れぬ先行きへの不安が蔓延するなか、団塊Jr.はコストのかかる子どもを積極的に多く持とうとはしなかった。

その時期に子育てに心配が要らないくらいの充実した制度ができていれば、今はさほど悲観的な状況でなかったのかも知れない。その後も出生率は下がり続け、2005年に最低の1.26となる。最近は医療補助、手当て、育児休業などの制度が以前よりよくなってきたために、若干改善して1.45となっている。

しかし、最近出産している世代(ゆとり~ロスジェネ)は、そもそも段階Jr.世代ほどの人口がいないため、出生率は上がっているものの出生数自体は減少している。

第3次ベビーブームは起きなかった。そして少子化が進んだ。

アジア経済の混乱という外的要因があったのは不運なことだったが、消費税増税時期や不十分な子育て制度などは日本社会固有の要因であり、ブームを起こせなかった反省を今後の社会運営に生かさなければならない。

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